マンダラ(曼荼羅 / mandala)

マンダラは自己の象徴として、ユング心理学で重要なイメージのひとつである。以下、河合隼雄の「ユング心理学入門」より、マンダラについて記述されている部分をまとめておく。

ユングは彼の患者たちが、その夢や幻想などにおいて、円や四角をテーマとする象徴的図形を見ることに気づいていた。そして、この出現の意義は患者自身にとっては不可解なことではあったが、その際に深い平安の感じや、調和の感情が伴うこと、あるいは治癒の起点とさえ感じられることがあるのをユングは重要視していた。

河合隼雄「ユング心理学入門」より

その後、ユングはチベットの文献に触れ、この幾何学的な図形が宗教的に大きな意味をもち、マンダラと呼ばれていることを知る。

チベットのSpituk修道院でマンダラを準備する僧たち

ユングの患者たちが東洋のマンダラを知っていたはずもないので、これをユングは、もともと自分が考えていた普遍的無意識のひとつの証拠として興味を持った。

もっとも東洋の場合は、宗教的観想の対象として存在し、普遍的な意味が高いマンダラだが、ユングの場合はもっと個人的なものとしてとらえた。

このようなマンダラは、ある個人が心的な分離や不統合を経験している際に、それを統合しようとする心の内部の働きの表れとして生じる場合が多いとユングはいっている。
(中略)
意識的には分裂の危機を感じ、あるいは強い不統合生を感じて解決策もなくて困っているひとが、このマンダラ象徴が生じることによって心の平静を得、新たな統合生へと志向してゆく過程を見ることを経験すると、人間の心の内部にある全体性と統合性へ向かう働きの存在、自己治癒の力の存在を感ぜずにはおれないのである。

河合隼雄「ユング心理学入門」より

春秋社の「マンダラ塗り絵」は、ユングの心理療法の影響を受けたセラピストが考案したもの。

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「曼荼羅塗り絵の勧めとユング心理学」

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