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マンダラぬり絵とユング心理学


はじめて曼荼羅(まんだら)ぬり絵のことを知ったのは、15年近く前だった。スイスで病院の精神科に自主的に入院して、いろいろな心理療法のプログラムを受けていたクライアントが、曼荼羅ぬり絵の時間もあってなかなか気に入っている、曼荼羅といえばユング、と思い出して教えてくれたのだった。

最近、趣味で曼荼羅塗り絵をやっているという話を日本にいる人からやたらに聞くようになったので流行しているのだろうか。集中力を高め、脳を活性化させるという謳い文句もあるが、この機会にユング心理学でマンダラがどんな意味を持っているか紹介したいと思う。

マンダラはユング心理学にとても関連が深く、ご覧の通り、ユング心理学の定番の教本、「エセンシャル・ユング」の表紙絵もマンダラになっている。

ユング心理学とマンダラ

マンダラは「魔法円」を意味するサンスクリット語。円を分割した幾何学図形や、円で囲まれた方形を意味する。この図形には、規則的な下位分割があり、見方によって中心からの放射状とも、中心へと向かう求心状ともみえる。ユングは、マンダラをこころの表現、とりわけ自己※の表現だと解釈した。ユング派の分析では、夢や描画の中にマンダラが見出される。マンダラは全体性への潜在力を表現し、宇宙的全体性を表しうるが、断片化した人にとっての防衛的機能を果たすこともある。

創元社「ユング心理学辞典」より

東洋においてマンダラは、瞑想に役立つようなイメージにたいして用いられるサンスクリットの用語である。それは要因を統合する象徴である。意識に混乱のみられる場合、マンダラは秩序ある構造を与えることによって自己※を癒すという補償的試みとして現れることもある。自己の象徴はマンダラであり、自己は一にして全の元型である。

創元社「エセンシャル・ユング」より

※ユング心理学で自己(Self)とは、意識と無意識を含んだ全体の中心。これに対して意識の中心を自我(Ego)と呼ぶ。

【参考】当サイトのユング心理学用語集のページにもマンダラの項目を追加。

秩序と中心がキーワードになるかと思う。なにごとも秩序や中心がないとカオスになりがちだがこころも同じで、こころも秩序と中心を求めており、そこに触れたときに安らぎを得られるといえる。

自然界に見られるマンダラのイメージ

自然界に見られるマンダラのイメージを集めてみた。

マンダラアート

花びらで、花で、石で、栗で・・・。

マンダラぬり絵

「マンダラ塗り絵」(春秋社2015)はユングの心理療法の影響を受けたというアート・セラピスト兼カウンセラーが考案したもの。瞑想はやろうと思ってもなかなかできないという人も、このぬり絵で似た効果が得られるかもしれない。


ユング派の心理療法士である著者Susanne F. Fincher(スザンヌ・F・フィンチャー, 1941-)が考案した72枚のマンダラを好きな色に塗るだけで、心とからだが知らぬまに癒される画期的な塗り絵集。集中力を高め、脳の活性化にも役立つ。

商品の説明より

以下は、「マンダラ塗り絵」(春秋社2015)のアマゾンレビューの抜粋。ユング心理学には誰も言及していないのが、少し寂しい。

ちょっとめんどくさいと思っていましたが、やってみるとハマってしまいました。無の境地になって、何も考えず、時間があっという間に過ぎてしまいます。落ち着いた気分にもなるので、友だちにも勧めようと思っています。

時間を忘れて没頭しちゃいますね。他のマンダラ塗り絵も持っていますが、大きめのこちらの本が好きです。

とてもいいと思います。大人も楽しめるし、子供にもいいと思います。他にも塗り絵本が色々ありますが、治療的な目的だと、これをお勧めしたい。

大人も子どもも夢中です! 大人向けかと思いきや、子どもたちにも大人気です。集中してやっています。

マンダラぬり絵作品集

複数の人から見せてもらったマンダラぬり絵作品集。上の「マンダラ塗り絵」に入っているのは右の作品。

左上の葉っぱ模様は日本語版(ひみつの花園 花いっぱいのぬりえブック)も出ている人気のぬり絵集Secret Gardenから。塗らずに眺めているだけでも楽しめるという人もいるし、質のいい色鉛筆とセットでプレゼントにしても喜ばれそう。


下は、ぬり終わったあとは栞に使える実用的なマンダラ塗り絵10枚。一枚塗り終えるのに2時間もかけて念入りに仕上げられている。


★ぬり絵といえば、マンダラではないが、スウェーデンに女子好みの流行ぬり絵作家がいる。

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