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カウンセラーが犯しやすいあやまりの例

ベテランユング派分析家の失敗談です。

この分析家は、カップルセラピーに来たカップルの妻の方が、夫への恨みつらみをすごい剣幕でまくしたてるのに不快感を覚え、夫のことを可哀想に思ったと言います。

そして、妻が指摘する夫の欠点について、この夫は、この結婚生活を通じて傷ついているためにそのような言動をするしかなかったのだろうと推測し、夫を責める気にならなかったそうです。

しかし、あとで振り返ると、自分が妻に対して持った感情は、分析家自身の個人的な過剰反応だったことに気づきました。自分が中立的立場にいなかったために、このカップルの関係を正確に把握することができず、その結果、このカップルセラピーは「大失敗」に終わったということです。

カウンセラーが私情をはさむべきではないことは、誰でも知っていますが、実際には、カウンセラーの反応が個人的でかたよったものであることは往々にしてあります。

これは、どんなに熟練したカウンセラーが、どんなに注意を払っていても、程度の差はあるものの完全には避けられないものです。深層心理学用語で「投影」といわれる現象で、カウンセラーの無意識にあるものが、クライエントに映し出されるからで、とくにコンプレックスが刺激されると、意志の力ではコントロール不可能な反応が自動的に出てきてしまいます。

だからこそカウンセラーは、せめて自分の失敗を自覚できるほどには自分のことを知っておくべきですし、カウンセリングを受けられる方は、カウンセラーの反応に「え?」と思ったときには、このことを思い出していただきたいと思います。

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